―エピローグ―








 それから数日、彼女は
 風見 沙世は検査入院を終え学校に出てきた。いつも通り冷たい態度で回りに何故入院したのかの経緯を曖昧に濁しながら話していた。
 そして僕はいつも通り友達が少ないながらも窓際の席で考え事にふける。
 いつも通りになるはずだった。
 でも、気分がよかった。だからほんの少し彼女の案に乗ったのだ。
 放課後、いつもなら生徒会室でなにやら難しい書類を見ているはずの彼女が来た下駄箱に駆け込んできた時はどうしたものかと思った。
「昴様、お帰りのところ呼び止めてすいません」
「・・・ど、どうしたんだよ」
「明日、お暇はあるでしょうか?」
「明日?まぁ、暇だろうけど、どうした?」
 何故だが頬が赤く紅潮している。走りすぎたのだろうか。
「私と、その、明日ですね、買い物に付き合って欲しいのです」
「え?」
「余り洋服という物を着ないもので、選んで欲しいのです。その昴様に」
「えーっと、明日?」
「は、はい」
「何時?」
「午前11時半、駅前の時計塔の前で」
「う、うん。わかった」
 本当にこの時、何故僕はOKを出したのだろうか、気分がよかったのは確かだった。でも、本来の僕だったらこの誘いには乗らなかっただろう、けれど普通に乗ってしまった。何かが僕の中でおかしくなったのだろうか、まぁ今考えても、詮無き事だ。
 僕の右手を握る彼女の左手の薬指には小さなダイヤモンドの指輪がある。どうも返してくれる気はないらしい。
「何で僕に選んで欲しいと思ったの?」
 疑問だった。何故僕に、別に僕はファッションセンスが抜群ってわけでもなく、どちらかというと悪い方だ。それにこういうのって女友達とか彼氏とかと連れ立って行くものではないのだろうか。
 僕と彼女の関係は、昔馴染みと―――

「許婚だから、じゃダメですか?」