―プロローグ―
夜中のファースドフードって何故こんなにも殺伐としているのだろうかって?そんなの俺に聞かないで欲しい。俺がどれだけ凄い人間であってもどれだけ愚かな人間であってもそんなもの説明できない。俺って薄いよねぇ、と思ってしまうだけだ。
二階のカウンターの席っていいよね、下の通りが見えるから、ついでに夜中だから全然人がいない、俺合わせて人は二人、なんて少ないんだ。
夜が美しい?月が綺麗?夜空に瞬く星が儚い?そんなもの俺たち人間に何の影響がある?思ったところで何の意味もない。届かない物を追うことはとてもよいことだ。それだけが共感できる。
人が何かに熱中するのが好きだ。
人が楽しんでいるところが好きだ。
人が人として生きているところが好きだ。
「なぁ、横の紙とってくんね?」
横の少年が不機嫌そうにタバコの煙を吹きかけてくる。
あぁ、手を拭くための紙ね。
「はい」
適当に数枚の紙を取って渡す。
「君は人生を楽しんでる?」
「は?」
再びタバコの煙を吹きかけられる。
「そりゃー、楽しんでるよ」
「そうか、それはよかった」
本当に良かった。
「でも、不合格」
「は?」
そんなダルそうな顔で言う言葉じゃない。
何より
「俺、禁煙中なんだ」
「あ?」
さようなら少年、後世でまた会おう。
「君の御身に世界の幸運があらん事を」
君の幸福を願っても、もうこの世界にいないんじゃどうしようもないけどね。
「ほら、首がずれて、ドシャ!」
少年の首が虚しく床に転がる。首がとれた木偶はそのままカウンターの上のトレイに血を噴出しながら首から崩れ落ちた。
「あぁ、心が痛んだ。いや別に君を殺したことにじゃなくて、ここの店員にだけどね」